退院の日 ⑥家族3人でのドライブ
夜21時前。パパが車で迎えに来た。
車の後部座席には、はるが入った棺が静かに置かれていた。
「後ろに座る?」
気を遣ってくれたパパに首を振って。いつも通りに助手席に座る。
帰り道はいつも通り。
交わす会話も普段通り。
「そういえば……家族3人でドライブだね」
何気なくさらりとパパが口にした。
それを聞いた私はぐっと口を噤んだ。
本当は、こんな形じゃなかった……
一緒に座って外の景色を見せてあげる筈だった。
それなのに、ドライアイスに囲まれて、冷たい棺の中に入れてなんて……あまりにも可哀想過ぎる……
考えれば考える程、涙が溢れそうで。
けれども、運転中の彼の横で泣く訳にもいかず。
私はただ黙ったまま、頷く事も出来なかった。